use-cases
「その市場規模、どこから?」と聞かれて詰まる日々を終わらせる
· Plugy編集部
こんな経験、ありませんか?
月曜の午後、上司からこう言われる。
「来週の企画会議までに、〇〇市場の提案書を出して」
ここから、企画書を書く時間より、根拠データを探す時間の方が長くなる——そんな経験はありませんか?
試しに ChatGPT や Claude に「〇〇市場の規模を教えて」と聞いてみる。数字は返ってくる。でも、よく見ると。
「その数字、どこから?」 「データが2年前の推計値ばかり」 「出典URLを聞いたら、トップページのURLが返ってきた」
結局、自分で e-Stat(政府統計ポータル) や官公庁サイトを何十クリックも辿る。半日かけて資料が集まっても、今度は Excel を開いて"まとめ直す"作業が待っている。
そして翌月、また別の企画で同じようにゼロからデータを探し直す。
週に2回あれば、それだけで月8時間。企画書を書くのに、書く以外の時間の方が長い。
この記事では、そのループから完全に抜ける方法を紹介します。しかも、完全無料で。
この記事でできること
- Claude に「〇〇の市場規模を教えて」と一言頼むだけで、政府統計から最新値が取得され、出典URL付きで Notion に保存される状態を作る
- e-Stat が公開する 700種類以上の公的統計を、日本語の質問だけで引き出せるようにする
- 集めたデータが Notion の「市場調査DB」に蓄積され、次の企画から"探す"を省略できる
- 上司に「その数字、どこから?」と聞かれたら、URLを即提示できる
- セットアップはおよそ30分、それ以降は追加費用ゼロで運用できる
はじめに:必要なものと費用(¥0)
このガイドは、完全無料で完結します。クレジットカード登録も不要です。
| 必要なもの | プラン | 費用 |
|---|---|---|
| Claude Desktop | 無料プランでOK | ¥0 |
| Notion | 無料プランでOK(データベース機能に制限なし) | ¥0 |
| e-Stat API | アプリケーションID発行のみ(メール認証3分) | ¥0 |
💡 なぜ無料で動くのか? e-Stat は日本政府が運営する公的な統計ポータルで、APIも法人・個人を問わず無料開放されています。Notion は無料プランでもデータベース機能がフル解放されており、個人利用には十分。Claude 無料プランも、市場調査のような"たまに叩く"用途なら快適に動きます。
なぜ企画書のデータ集めは、こんなに時間がかかるのか
そもそも、なぜこれほど時間を溶かしているのでしょうか。痛みの正体を4つに分けてみます。
① どの統計を見ればいいか、そもそも分からない
「居酒屋業界の市場規模を調べたい」と思ったとき、どの統計名を見るべきかがわからない。経済センサス? 産業連関表? サービス業動向調査? e-Stat には700種類以上の統計があるのに、検索窓で「居酒屋」と入れても、目的のデータに一発でたどり着けません。
"統計名"という専門語彙を知らない限り、e-Stat は使えない。これが最初の壁です。
② e-Stat の検索UIが"専門家前提"すぎる
ようやく統計の目星がついても、今度は e-Stat 本体のUIが難しい。
- データセットの階層が深く、目的の表にたどり着くまで平均5〜10クリック
- 統計表の項目名がコード付き(例:「大分類I 中分類76」)で、一般読者には読めない
- 表示形式が固定で、業種 × 都道府県 × 年度の横断集計は自前で組み直す必要がある
これは統計を日常業務で使う専門家向けの設計で、企画書のために年に数回使う人には重すぎるのです。
③ ダウンロードしたExcelが、読めない
やっと欲しい統計表に辿り着き、Excelをダウンロード。開いた瞬間、気持ちが折れます。
- セルが結合されまくっていて、コピペすると崩れる
- 業種コード・地域コードが数字の羅列で、名前が書かれていない
- 「この列は何?」を調べるために、別ファイルの"コード表"を見に行く必要がある
ここであきらめて、代わりに民間の有料レポートを買う人が一定数います。
④ AIに聞いても"出典URL"が返ってこない
「面倒だから ChatGPT に聞いてしまおう」と思っても、今度は別の壁。
- 訓練データのカットオフ以降の統計が出ない
- 「厚労省のデータによると〜」とそれらしい数字が返るが、URLが無い
- 「出典URLを教えて」と頼むと、e-Stat のトップページURLしか返ってこない
- 企画書の脚注に貼れる"精度と出典"を両立したデータが手に入らない
結局、手で探すに戻る。振り出しです。
この仕組みの全体像
今回作る仕組みは、とてもシンプルです。
あなたの質問(日本語)
↓
Claude(AIが統計名を判断)
↓
e-Stat MCP(政府統計APIを叩いてデータ取得)
↓
Notion MCP(市場調査DBに出典URL付きで保存)
↓
あなたの手元に、構造化された"根拠データベース"
役者は3つだけ。これらを MCP(Model Context Protocol) という共通規格でつなげば、Claude が勝手に統計を探してきて、勝手に Notion にまとめてくれます。
MCPとは? AIが外部サービス(e-Stat・Notion など)を操作するための共通規格です。使う側は「e-Stat MCP」と「Notion MCP」を Claude に接続するだけで、AIがその2つのサービスを自由に行き来できるようになります。詳しくは MCPとは? を参照してください。
必要なMCPの準備
2つのMCPを Claude Desktop に接続します。
- e-Stat MCP — 政府統計700種類以上へのアクセス
- Notion MCP — Notion のページ・データベースの読み書き
所要時間はトータル約20分。ステップごとに進めていきましょう。
ステップ1: e-Stat アプリケーションIDを取得(3分・無料)
e-Stat API を叩くための"鍵"を発行します。
- e-Stat API機能 にアクセス
- 右上の「ユーザー登録」からメールアドレスを登録(メール認証あり)
- ログイン後、「マイページ」→「アプリケーションID発行」を開く
- 「名称(任意)」に
plugy-market-researchなどを入力し、発行 - 発行された 32桁の文字列(APP_ID)をメモ
💡 Tip: 発行されたAPP_IDは、次のステップ3で使います。扱いはパスワードと同じ。SNSやGitに貼らないでください。
ステップ2: Notion で「市場調査DB」を作る(5分)
調査結果を貯める箱を Notion に用意します。
- Notion にログイン(無料プランでOK)
- 新しいページを作成し、タイトルを「市場調査DB」にする
- ページ内で
/databaseと入力し、「データベース - インライン」を選ぶ - 以下の7つのプロパティ(列)を追加する
| プロパティ名 | タイプ | 用途 |
|---|---|---|
| 調査名 | タイトル | 例: 「飲食業 市場規模 2024年」 |
| 業種 | マルチセレクト | 例: 飲食業、宿泊業、IT |
| 地域 | マルチセレクト | 例: 全国、東京都、関東 |
| 指標 | テキスト | 例: 事業所数、従業員数、平均年収 |
| 数値 | テキスト | 取得した数値(単位込み) |
| 出典URL | URL | e-Stat の該当ページ |
| 取得日 | 日付 | 調査を実行した日 |
続いて、Notion API トークンを発行します。
- Notion Integrations を開き、「+ New integration」
- 名前を
Claude-MCPなどに、ワークスペースを選択して作成 - 「Internal Integration Secret」(
secret_で始まる文字列)をメモ - 最後に、先ほど作った「市場調査DB」のページ右上「...」→「Add connections」で、作ったインテグレーションを有効化
ステップ3: Claude Desktop に e-Stat MCP を接続(5分)
Claude Desktop をまだ持っていない方は claude.ai/download から無料ダウンロードしてください。
e-Stat MCP は Python で動くため、uv(Python実行環境)を先にインストールします。
macOS / Linux:
curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh
Windows (PowerShell):
powershell -c "irm https://astral.sh/uv/install.ps1 | iex"
インストールが終わったら、Claude Desktop の設定ファイル claude_desktop_config.json を開きます。
- macOS:
~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json - Windows:
%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json
以下の mcpServers セクションを追記してください(すでに他の設定がある場合は mcpServers の中身に追加)。
{
"mcpServers": {
"e-stat": {
"command": "uvx",
"args": ["estat-mcp", "serve"],
"env": {
"ESTAT_APP_ID": "ここにステップ1で取得したAPP_IDを貼る"
}
}
}
}
保存して Claude Desktop を完全に再起動すれば、e-Stat MCP が有効になります。
ステップ4: Claude Desktop に Notion MCP を接続(5分)
同じ claude_desktop_config.json の mcpServers セクションに、Notion MCP も追記します。
{
"mcpServers": {
"e-stat": { /* 先ほど追加済み */ },
"notion": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@notionhq/notion-mcp-server"],
"env": {
"OPENAPI_MCP_HEADERS": "{\"Authorization\": \"Bearer ここにステップ2のNotion APIトークンを貼る\", \"Notion-Version\": \"2022-06-28\"}"
}
}
}
}
再度、Claude Desktop を完全に再起動して準備完了です。
🔧 Claude Code(CLI)を使っている方は:
claude mcp addコマンドで同じ2つを接続できます。詳細は e-Stat MCP と Notion MCP の各ページをご覧ください。
ユースケース1:市場規模を5分で調べて Notion に保存
最もよく使うパターンです。Claude Desktop を開いて、こう話しかけるだけ。
プロンプト例
e-Stat から「飲食業」の全国の事業所数・従業員数(最新年度)を取得して、
Notion の「市場調査DB」に以下のフォーマットで保存してください。
- 調査名: 「飲食業 市場規模 YYYY年」
- 業種: 飲食業
- 地域: 全国
- 指標: 事業所数 / 従業員数(2行に分けて保存)
- 数値: 単位込み
- 出典URL: e-Stat の該当統計表ページ
- 取得日: 今日
実際に起きていること(裏側)
Claudeはこのプロンプトを受け取ると、内部で以下を順番に実行します。
- e-Stat MCP 経由で「飲食業」に該当する統計名(経済センサス-活動調査)を特定
- 最新年度のデータセットから事業所数・従業員数を取得
- データの出典URL(統計表ID入りのパーマリンク)を生成
- Notion MCP 経由で「市場調査DB」に2行を新規作成
- 各プロパティに取得した値を埋めて保存
- 「保存完了。Notionページはこちら」とURLを返答
利用者が触るのはプロンプト1本だけ。所要時間は30秒〜1分です。
ユースケース2:都道府県別ランキングで出店エリアを決める
新規出店や商圏選定でよく使うパターンです。
プロンプト例
e-Stat の経済センサスから、喫茶店業の事業所数を
都道府県別に取得し、上位10都道府県をランキングで教えてください。
その後、Notionの市場調査DBに、上位10件を出典URL付きで保存してください。
Claude は経済センサスから都道府県×業種のクロス集計を引き出し、ランキングを生成。Notion には「喫茶店業 事業所数 都道府県ランキング(上位10)」として10行が追加されます。
自分で Excel を結合・並び替えする手作業がゼロになります。
ユースケース3:企画書の"根拠データベース"をチームで育てる
このガイドの本当の価値は、1回の調査で終わらないことにあります。
一度集めたデータが、次の企画で再利用される仕組み
Notion の「市場調査DB」は、使うたびに行が増えていきます。3ヶ月後、新しい企画でこうプロンプトを打てば——
Notion の市場調査DBから、飲食業に関する過去のデータを全部見せて。
数値・年度・出典URL を一覧で。
Claude は蓄積された Notion DB を検索し、過去に取得したデータを再利用してくれます。探す作業がゼロになるのはもちろん、データ取得日が記録されているので「これは古いから最新版を取り直そう」という判断もできます。
チームで Notion を共有すれば、誰かが一度集めたデータは全員が使える"根拠のチーム知"が育っていきます。
上司に「その数字、どこから?」と聞かれたら
ここがこの仕組みの一番おいしい部分です。
出典URLを常に引用させるプロンプトの書き方
次の一文を、プロンプトに必ず入れるだけです。
「出典は e-Stat の統計表IDつきURLを必ず記載してください。URLが特定できないデータは保存しないでください。」
Claude はこの指示を守り、出典が取れないデータを勝手に保存しなくなります。企画書の脚注には、その Notion 行のURLをそのまま貼るだけ。これで「その数字、どこから?」は完全に封じ込めです。
統計には"公表時点"がある(最新年度がない場合の対処)
政府統計は調査→集計→公表まで1〜3年かかるものが多くあります。2026年時点で手に入る最新が2023年データ、ということも普通です。
プロンプトにこう一言加えておくと、安心です。
「最新年度のデータがない場合は、"公表年度"を併記してください。」
Claude は取得データに「公表:令和5年(2023年)調査」のような注釈を付けてくれるので、企画書で"古さ"を正しく扱えます。
まとめ
企画書の根拠データ集めは、「書く前の作業」ではなく、「書きながら終わる作業」にできます。
- e-Stat MCP が政府統計700種類から必要データを取ってくる
- Claude が「どの統計を見るべきか」を判断する
- Notion MCP が出典URL付きで市場調査DBに保存する
- 集めたデータは次の企画で自動的に再利用される
これらを全部無料でつなげる。これが、MCPが非エンジニアにもたらす変化です。
次の1歩
まずは ステップ1の e-Stat アプリケーションID取得(3分) から始めてください。IDを取ってしまえば、残り27分でこの仕組みが完成します。最初の1回は手順に時間がかかりますが、翌日からの調査は毎回30秒になります。