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契約書の根拠法令、AI に聞けば数十秒。賃貸・雇用・業務委託の『この条項、大丈夫?』を自分でレビュー

· Plugy編集部

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こんな経験、ありませんか?

「賃貸の更新料、これって払う義務あるの?」 「業務委託で『中途解約は違約金』と書かれているけど、本当に有効?」 「有給休暇、入社半年で何日もらえるんだっけ?」

自分が結ぶ契約書には、必ず根拠法令があります。賃貸契約なら民法と借地借家法、雇用契約なら労基法と労契法、業務委託なら民法と下請法。条文を読めば「この契約条項は法的に有効か」「自分の権利は何か」がわかります。

でも実際にやろうとすると、e-Gov 法令検索でタブを 20 個開き、目的の条文が何条かわからず、関連条文を辿るうちに半日が消える。「ちょっと確認したい」レベルの疑問には、コストが見合わないから、結局調べずに終わる。

この記事では、その状況を 「契約書の疑問を AI に投げると、根拠条文付きで返ってくる」 仕組みに変える方法を紹介します。

この記事でできること

e-Gov 法令 MCP を Claude Desktop / Cursor / Cline などに接続することで、以下のような作業を AI に指示するだけで処理できるようになります。

  • 「うちの賃貸契約の原状回復条項、民法と借地借家法でレビューして」
  • 「業務委託契約の中途解約条項、民法の請負/委任で根拠条文を出して」
  • 「労働基準法 39 条の年休、6 年勤続だと何日付与?根拠条文を引用して」
  • 「フリーランス保護新法、どんな条文があるか教えて」

人間が手作業でやると「e-Gov 検索 → タブ移動 → 関連条文を辿る → メモする」と数十分かかる作業を、AI に「条文の引用 + 自分の質問への回答」までまとめて任せられます。重要な法的判断は弁護士に相談すべきですが、「相談する前に自分で論点を整理する」段階を数十秒に圧縮できるのが本ツールの価値です。

使用するサービスについて

e-Gov 法令検索とは?

e-Gov 法令検索 は、デジタル庁が運営する日本の全法令データへの公式アクセス手段です。憲法・法律・政令・省令・規則を体系的に検索できる公式システムで、API も無料で提供されています(認証不要)。

民法・労働基準法・借地借家法といった基本法から、フリーランス保護新法のような最新法令まで、現行条文の正本が常に最新の改正反映で公開されています。

e-Gov 法令 MCP とは?

e-Gov 法令 MCP は、e-Gov 法令検索 API を AI から直接呼び出せるようにするコミュニティ製の MCP サーバーです(GitHub: ryoooo/e-gov-law-mcp、MIT ライセンス)。デジタル庁公式の MCP ではありませんが、API 自体は公式のものをそのまま呼び出します。

  • 完全無料 / API キー不要
  • 8 つのツール(条文検索・全文取得・キャッシュ管理)を提供
  • AI が条文を勝手に要約せず、原文を引用してから分析するプロンプト機構が組み込み済み

詳細は Plugy の e-gov-law ページ を参照してください。


前提条件

  • Claude Desktop(または Cursor / Cline)がインストール済み
  • Python 3.10 以上
  • uv(Python パッケージマネージャ)
  • Git

注意: 本 MCP は PyPI 公開されていないため git clone + uv sync でローカルセットアップが必要です。Python の操作が初めての方は、まず uv の公式ガイド を参照して uv をインストールしてください。Mac であれば brew install uv、Windows であれば WSL2 環境内でのインストールが推奨です。

Step 1: e-Gov 法令 MCP のセットアップ

リポジトリのクローン

ターミナルで以下を実行します。

git clone https://github.com/ryoooo/e-gov-law-mcp.git
cd e-gov-law-mcp
uv sync

uv sync で必要なパッケージが自動的にインストールされます。

Claude Desktop への設定

設定ファイル(macOS: ~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json / Windows: %APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json)を編集します。

{
  "mcpServers": {
    "e-gov-law": {
      "command": "uv",
      "args": [
        "run",
        "--directory",
        "/path/to/e-gov-law-mcp",
        "python",
        "run_server.py"
      ]
    }
  }
}

/path/to/e-gov-law-mcp を、先ほど git clone したディレクトリの絶対パスに置き換えてください(~/ を使わず、/Users/your-name/... の形式で記述)。

設定後、Claude Desktop を再起動します。

Step 2: 動作確認

Claude Desktop を再起動後、チャット画面で以下を試してみましょう。

e-gov-law に接続できているか確認して、民法 第六百二十二条の二(敷金)の条文を引いて

正常に接続されていれば、AI が find_law_article ツールを呼び出して敷金条項の本文を引用します。

重要: 条文番号は漢数字形式で指定すると安定します。詳しくは後述の「つまずきやすいポイント」を参照してください。

実践的な活用プロンプト例

シナリオ 1: 賃貸契約の原状回復・敷金返還をレビューする

退去時に「壁紙の張替代を敷金から差し引きます」と言われた——そんなときの根拠条文確認。

今度賃貸を退去する。原状回復の範囲・敷金返還義務・更新拒絶の正当事由について、
民法と借地借家法の関連条文を引用したうえで、契約書レビューの観点を整理して。

AI が呼ぶツール:

  • batch_find_articles で民法 第606条(修繕義務)/ 第621条(原状回復)/ 第622条の2(敷金)を一括取得
  • 借地借家法は法律名直接指定で誤マッチする既知の問題があるため、search_laws(law_title="借地借家法") で正しい law_id(403AC0000000090)を確認 → get_law_content 経由で第26条(更新みなし)/ 第28条(正当事由)を抽出(詳細は後述「つまずきやすいポイント ②」参照)

引用される主な条文(編集部が実際に動かして取得した本文の要旨):

民法 第621条: 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。

民法 第622条の2: 賃貸人は、敷金(……)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない

「通常損耗・経年変化は原状回復義務に含まれない」が 2020 年改正民法で明文化されている点、敷金は「賃貸借終了 + 賃貸物返還」で返還義務が発生する点が一目で確認できます。

シナリオ 2: 業務委託契約の請負/委任を見分ける

副業で業務委託契約を結ぶときに「これは請負か準委任か」「中途解約はできるか」を確認。

業務委託契約のドラフトをチェック。請負と準委任の違い、中途解約のリスク、
取適法(旧下請法)の書面交付義務について、民法と取適法の条文を引いて整理して。

AI が呼ぶツール:

  • find_law_article で民法 第六百五十一条(委任の解除)
  • batch_find_articles で取適法(昭和31年法律第120号)第4条(書面交付義務)

引用される主な条文:

民法 第651条: 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。 / 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。

取適法 第4条: 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。

【重要】法律名そのものの改正 いわゆる「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)は、**令和7年法律第41号(2026年1月1日施行)**により名称改正され、現在の正式名称は 「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」 です。略称は 「取適法」「中小受託取引適正化法」(e-Gov 上の abbrev フィールドで確認)。同改正で「下請事業者」「親事業者」も「中小受託事業者」「委託事業者」に用語変更されました。

AI が学習データに依存して旧名称・旧用語で回答することがあるため、最新の正式名称・条文用語は必ず e-Gov の現行版で確認してください。

シナリオ 3: 雇用契約・労働基準法を読む

入社時の労働条件通知書、解雇通告、有給休暇付与日数の確認。

雇用契約書をレビュー。解雇予告(労基20条)、労働時間上限(労基32条)、
年次有給休暇の付与日数(労基39条)、解雇権濫用法理(労契法16条)を、
条文を引いたうえで雇用主側に確認すべきポイントを整理して。

AI が呼ぶツール:

  • batch_find_articles で労働基準法 第20条 / 第32条
  • find_law_article で労働基準法 第三十九条(漢数字)/ 労働契約法 第十六条(漢数字)

引用される主な条文:

労働基準法 第20条: 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

労働基準法 第三十九条: 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

継続勤務年数に応じた加算労働日(同条第2項の表):

六箇月経過日からの継続勤務年数加算労働日
1 年1 労働日
2 年2 労働日
3 年4 労働日
4 年6 労働日
5 年8 労働日
6 年以上10 労働日

6 か月経過時点の 10 労働日にこの加算が乗るため、勤続 6 年半以降は年間 20 労働日が付与されます。

労働契約法 第十六条: 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする

「解雇は 30 日前予告か 30 日分賃金」「6 年勤続なら年休 20 日」「解雇権濫用の法理(労契法 16 条)」が一発で確定します。

シナリオ 4: 法改正の最新動向をキャッチアップ

「フリーランス保護新法」「育介法改正」など、ニュースで聞いた改正の正式条文を引きに行く。

「特定受託事業者」をキーワードに、関連する現行法令を一覧で見せて。
正式名称・施行日・関連改正法も合わせて。

AI が呼ぶツール:

  • search_laws_by_keyword(keyword="特定受託事業者", limit=5)

得られる主な情報:

  • 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号、2024-11-01 施行)
  • 略称「フリーランス・事業者間取引適正化等法
  • 関連改正の波及: 独占禁止法・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・女性活躍推進法

ニュース報道では「フリーランス保護新法」と通称される法律も、e-Gov では正式名称で登録されています。一つのキーワード検索で新法 + 関連改正法の両方が見えるため、改正の波及範囲を把握するのに有効です。

つまずきやすいポイント

編集部が実際に動かしてハマった 3 つのパターンを共有します。

① 条文番号は「漢数字形式」が安定する

batch_find_articles で「第39条」「第37条」「第16条」のようにアラビア数字で渡すと、章の境界条文では条文本文ではなく目次の章立て(「(第三十二条―第四十条)」のような表記)にマッチして本文取得に失敗することがあります。

そのときは find_law_article漢数字形式「第三十九条」「第十六条」 に切り替えると本文が取得できます。AI に「漢数字形式で再試行して」とリトライ指示すれば自動で対応してくれます。

② 法律名のあいまい性

「借地借家法」と指定しても、内部マッピングが大規模災害借地借家法(平成25年法律第61号)に誤マッチするケースを確認しました。本来の借地借家法は平成3年法律第90号です。

search_laws(law_title="借地借家法") で先頭に出てくる法令の law_id(403AC0000000090)を AI に指定させることで回避できます。「法律名で取れなかったら search_laws で law_id を確認して」と AI に伝えておくと安定します。

③ キーワード検索は「条文用語」で行う

「共同親権」のようなニュース用語をキーワードに search_laws_by_keyword を呼ぶと 404 エラーになります。改正民法の親権条項では「父母双方」「父母の協議」と書かれており、「共同親権」という文字列は条文中に存在しないためです。

通称ではなく条文用語(「親権者」「父母双方」「特定受託事業者」など)で検索する必要があります。AI に「条文に使われている用語を推測して、複数候補で検索して」と伝えると精度が上がります。

よくある質問

Q. 弁護士の代わりに使えますか?

いいえ。本 MCP はあくまで「条文の正本を素早く引く」ためのツールです。条文の解釈・適用・判例の評価には専門知識が必要で、重要な法的判断は必ず弁護士・行政書士・社労士に相談してください。

本 MCP の価値は「相談する前に自分で論点を整理する」段階を圧縮できることにあります。

Q. 法令の最新性はどこまで信頼できますか?

e-Gov は現行条文の正本ですが、施行日と公開タイミングに若干のラグがある場合があります。施行直後の法改正については、念のため施行日と amendment_enforcement_date フィールドを照合してください。

Q. 大きな法律(民法・会社法など)の全文を取りたい

get_law_content で全文を取れますが、民法は 300KB 超・8000 行超で AI のレスポンス制限を超えるためファイルダンプ扱いになります。ピンポイントで条文を取りたい場合は find_law_article を使う設計が前提です。

Q. Windows ネイティブで動きますか?

PowerShell ベースの環境で uv がインストールされていれば動作しますが、Python 開発環境のセットアップが煩雑なため、WSL2 + Linux 環境での利用が推奨です。

まとめ

e-Gov 法令 MCP を導入することで、契約書レビューの「条文確認」フェーズが数十分 → 30 秒に短縮できます。

ポイントは以下の 3 つです。

  1. AI に条文を勝手に要約させず、原文を引用させる — MCP に組み込まれた legal_analysis_instruction 機構が、AI に「原文引用 → 構造化分析」の順で回答するよう仕向けます
  2. 漢数字形式で条文番号を指定 — アラビア数字より安定します
  3. 弁護士相談の前段階として活用 — 自分で論点を整理することで、専門家相談の精度とスピードが上がります

「ちょっと確認したい」レベルの法的疑問が、確認するに値する作業コストに下がります。賃貸更新・雇用契約・副業の業務委託など、自分が結ぶすべての契約を「条文ベースで眺める習慣」を作るきっかけにしてみてください。

免責: 本記事の AI 出力例は編集部が実際に動かして取得した参考情報です。実際の契約レビュー・法的判断には弁護士・行政書士等の専門家にご相談ください。