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「遺言が無いから、もめない」——本当でしょうか
相続のもめごとの多くは、財産の大きさや遺言の有無ではなく、「取り分の思い込み」から始まります。「うちは大した財産も無いし、遺言も無いから揉めない」と思っていたら、いざ話し合いで「誰がどれだけ受け取るのか」で意見が割れた——。あるいは「兄が『全部自分が継ぐ』と言っている。下の自分は何ももらえないのか」と諦めかけている——。
「遺言が無いと、相続ってどうやって分けるんだっけ?」 「遺言に『全部○○へ』と書いてあったら、他の家族は本当にゼロ?」 「親に借金があったかもしれない。何もしないと、まさか自分が背負うの?」
相続は、誰にでもいつか関わるのに、「誰が・どれだけ・いつまでに」の基本が正しく知られていないテーマの代表格です。ここを取り違えると、「受け取れるはずの取り分を諦める」「期限を逃して借金まで背負う」といったことが起きます。
でも、その線引きには、はっきりした根拠条文があります。民法です。この記事では、その条文をAIに正確に引かせて、自分のケースを整理する方法を紹介します。
この記事でできること
e-Gov 法令 MCP を AI(Claude Desktop など)につなぐと、こんな質問に根拠条文つきで答えてもらえます。
- 「遺言が無いとき、配偶者と子で相続分はどうなる? 民法900条の条文を引いて整理して」
- 「遺言で『全部長男へ』と書かれていた。他の相続人に残る『遺留分』を、民法1042条の条文で確認して」
- 「親に借金がありそう。相続放棄の期限を、民法915条の条文で教えて」
“AIにそのまま聞く”のと、何が違う?
AI(ChatGPT など)に法律をそのまま聞くと、もっともらしい嘘の条文番号や条文を作文してしまうことがあります。e-Gov 法令 MCP をつなぐ意味は、AI が示す条文をデジタル庁の公式データに由来する「本物の現行条文」にして、あなた自身が原文を見て確かめられるようにすること。ネット検索の古い記事でも、AI の丸暗記でもなく、いま有効な条文を出発点にできるのがこのやり方です。
ただし、これで答えが確定するわけではありません。どの条文を選び・どう当てはめるかは AI 任せで間違うこともあります。だからこれは「答えを出させる」道具ではなく、本物の条文をもとに自分で論点を整理するための方法です(最終判断は後述の専門の窓口へ)。
家族構成と状況を渡す
「配偶者と子が2人」「遺言がある/無い」をAIに伝える。
引く条文を判断する
質問を読み、民法のどの条文が必要かを見極める。
公式条文を取得する
デジタル庁の法令データから現行条文を取得。
根拠条文つきで返る
取り分・最低保障・期限の原則と、論点の整理が戻る。
使うサービスについて
e-Gov 法令検索 は、デジタル庁が運営する日本の全法令データへの公式アクセス手段です。現行条文の正本が、改正を反映した最新の状態で公開され、API も無料で提供されています(認証不要)。
e-Gov 法令 MCP は、その API を AI から直接呼び出せるようにするコミュニティ製のツールです(デジタル庁公式の MCP ではありませんが、呼び出す API は公式のものです)。完全無料・API キー不要で使えます。
ツールの詳細とスペックは Plugy の e-gov-law ページ を参照してください。
必要なもの・設定
- Claude Desktop など、MCP に対応した AI クライアント
- e-Gov 法令 MCP の接続(無料・API キー不要)
設定でつまずいたら
接続の手順は、ツール詳細ページと、どのツールにも使える「おまかせ設定プロンプト」のガイドにまとめています。「自分のパソコンの場合はどうすれば?」も、その手順に沿って AI に聞けば一つずつ案内してくれます。
条文を読むと、相続の「思い込み」がほどける
ここがこの記事の核心です。以下は、編集部が 2026年6月12日に e-Gov 法令 MCP で取得・確認した現行条文(民法)です。条文は少し固く見えますが、太字の部分と、すぐ下のやさしい説明だけ追えば大丈夫です。
① 遺言が無いとき、誰がどれだけ?=法定相続分(民法890・887・900条)
遺言が無い場合、誰が相続人になるかには順番があります。配偶者は常に相続人になり(第890条「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」)、それと並んで、第1順位は子(第887条「被相続人の子は、相続人となる」)。子がいなければ直系尊属(父母など)、それもいなければ兄弟姉妹、という順位です(第889条)。
そのうえで「割合(相続分)」を定めているのが第900条です。
民法 第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。…(後略)
つまり「配偶者+子」なら配偶者2分の1・子全体で2分の1(子が2人ならその2分の1をさらに等分)、「配偶者+親」なら配偶者3分の2・親3分の1、「配偶者+兄弟姉妹」なら配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1、というのが条文上の原則です。
法定相続分は「確定した取り分」ではない
第900条の割合は、遺言が無く、相続人どうしの遺産分割協議が整わないときの基準です。実際には、生前の贈与(特別受益)や介護などの貢献(寄与分)といった事情で変わることがあり、相続人全員が合意すれば違う分け方もできます。条文は「何が原則か」を知るための土台であり、確定額そのものではありません。
② 【ここが肝】遺言で「全部○○へ」と書かれても、ゼロにはできない=遺留分(民法1042条)
最も誤解が多いのがここです。遺言があっても、一定の相続人には「遺留分」という最低保障が残ります。「全部を長男へ」という遺言でも、配偶者や他の子は、自分の遺留分にあたる金額を請求できます。
民法 第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、…(中略)…次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。 一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一 二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一 2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
読み方のコツは2つ。まず、「兄弟姉妹以外の相続人は」——つまり兄弟姉妹には遺留分がありません(亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言で全額を他へ渡すことが可能)。次に、全体の枠は原則2分の1(相続人が直系尊属だけのときは3分の1)で、相続人が複数いれば、第2項のとおり、その枠に各自の法定相続分を乗じた(按分した)割合が一人ひとりの遺留分になります。
たとえば配偶者と子1人なら、枠の2分の1を法定相続分(各2分の1)で按分し、配偶者・子それぞれ4分の1ずつが遺留分の目安、という具合です。
具体的な金額・手続きは条文だけでは決まらない
実際の遺留分の額は、生前贈与の持ち戻しや債務の控除などで複雑に変わります。また、遺留分を請求する手続き(遺留分侵害額請求)には期間制限があります。条文は「最低保障が残る」という原則を知るための出発点であり、具体的な金額・期限・進め方は、下の「免責」のとおり専門家にご確認ください。
③ 借金も相続する。放棄するなら「3か月以内」=相続放棄(民法915・921・939条)
相続は、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスも引き継ぎます。「親に借金がありそう」というとき、引き継ぎたくなければ「相続放棄」という選択肢があり、条文は期限をはっきり定めています。
民法 第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
放棄をするとどうなるか。これも条文に明確です。
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
つまり、放棄をすればプラスもマイナスも一切引き継がない(借金も背負わない)。ただし注意したいのは、起算点が「自分が相続人になったと知った時から3か月」であること、そして放棄は家庭裁判所への申述という手続きが必要で、自動では成立しないことです。
そして、期限内に手続きをしなければどうなるか。それも条文に書かれています。
民法 第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。…(中略)…二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
つまり、3か月の期限内に放棄(または限定承認)をしないと、原則として単純承認=借金も含めてすべてを引き継いだものとして扱われます。放棄を考えるなら、まず期限の確認が大切です。
実際に使ってみる(プロンプト例)
設定が済んだら、家族構成と状況をそのまま AI に伝えてみましょう。
例1: 遺言が無いときの取り分を条文で確認する
父が亡くなり、相続人は母(配偶者)と私たち子ども2人です。遺言はありません。
民法900条の条文を引用したうえで、それぞれの法定相続分が
どうなるのかを、条文の文言に沿って整理してください。
例2: 遺言があるときの「遺留分」を確認する
父の遺言に「全財産を長男に相続させる」と書かれていました。
相続人は私(次男)と長男の2人です。
民法1042条を引用して、私に遺留分が残るのか、
残るとすればどんな割合になるのかを条文の文言で説明してください。
「自分のケースで、条文上は何が原則なのか」を振り分ける——その論点を、根拠条文つきで自分の手元に持てるのが、このやり方の価値です。
よくある質問
Q. 遺言に「長男に全部」と書いてあったら、私はもらえない?
いいえ、最低保障が残ることがあります。あなたが兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)なら、民法1042条の「遺留分」にあたる金額を請求できます。逆に、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になる場合は、遺留分がありません。
Q. 親に借金がありそう。何もしないとどうなる?
相続は借金などのマイナスも引き継ぎます。引き継ぎたくなければ「相続放棄」を選べますが、自分が相続人になったと知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。期限を過ぎると借金ごと引き継ぐ扱いになり得るため、早めの確認が大切です。
Q. 出てくる条文は最新ですか?
e-Gov は現行条文の正本です。相続のルールは改正が入ることがあるため、施行されたばかりの改正に関わる場合は、施行日も合わせて確認してください。
まとめ
「相続って、結局どうなるの?」と迷ったとき、思い込みで動く前にできることがあります。
- 遺言が無いときの取り分は条文にある — 配偶者は常に相続人で、割合は第900条(配偶者+子なら各2分の1など)。ただし確定額ではなく“協議が整わないときの基準”
- 遺言があっても“ゼロ”にはできない — 兄弟姉妹以外には第1042条の「遺留分」(原則2分の1の枠)が残る
- 放棄するなら3か月以内 — 借金も相続する。引き継ぎたくなければ第915条の期限内に家庭裁判所へ
「もらえるはず/もらえないはず」「背負うしかない」の思い込みを「条文を見てから判断する」に変えるだけで、対応は大きく変わります。暮らしまわりをもっと条文ベースで確かめたい場合は、退去時の敷金を条文から確かめるガイド、有給休暇を条文から確かめるガイド、クーリングオフを条文から確かめるガイドも合わせてどうぞ。
免責
本記事は、AI で現行条文を引いて自分で論点を整理するための情報提供であり、個別の事案への法的アドバイスではありません。相続は、相続人の確定・財産や債務の調査・遺産分割・遺留分・税金など多くの要素が絡み、最終的な判断は条文だけでは決まりません。実際の手続きでお困りの場合は、法テラス(日本司法支援センター)、相続放棄の手続きは家庭裁判所(相続の放棄の申述)、また弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。AI の出力例は編集部が実際に取得した参考情報です。
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